2020年4月に発売して以来、
大ヒットとなり“今一番売れている教育書”と言われる書籍「自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方」。
子育て中の方にとって目からウロコの子どもとのコミュニケーション術が詰まっています。
今回はオックスフォード大学の児童発達学博士号を保有する著者の島村華子先生(以降、華先生)にお話しをお伺いしました。
華先生が提案するのは育児教育として世界中から注目を集めるモンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア教育からヒントを得たもの。
教育法と聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、
実は声のかけ方一つを意識するだけで誰でもすぐに実践できるコミュニケーション術なんです。
子どもの能力は親の想像以上
人として尊重することが最も大切
みなさんは普段、
どのような言葉をお子さんに投げかけていますか?
何回叱っても話を聞いてくれない、
忙しくてつい適当な褒め方になってしまう、
など子どもとの接し方や距離感は親の永遠の課題ですよね。
頭ではダメなことはわかるけど……
じゃあ代わりになんて言ったら子どもに伝わるの?!
華先生はそんな多くの人が抱える悩みに対してこのようにお話ししてくれました。
「使う言葉を考える前に、まず子どもに対するイメージを変えることが大切です。
『子どもだから教えてあげなきゃ、守ってあげなきゃ』と考えるのではなく、
子どものことを一人の人間として尊重することを前提にすること。
子どもは私たちが思っているよりもたくさん能力があり、
自分で学習する力を持っているんです。
なので子どもに対して何かを教えてあげるのではなく、
一緒に学び合い、
お互いを尊重するという考えを持つようにしましょう」。
華先生は、親が意識を変えて接することで子どもの自ら考える力が育まれると言います。
また親は子どもの考えに寄り添うことで言動への理解が深まるのだそう。
その結果家族全体で良好なコミュニケーションが取れるようになるというのが華先生の教育法の大切なポイントなのです。
子どもの目線を知るとわかる
行動の本当の意味
では、具体的な叱り方、
ほめ方についてお伝えしましょう。
叱り方では否定的な言葉を使わずに子どもの気持ちを受け入れてから軌道修正をすることが大切だと華先生は語ります。
「たとえば子どもが走ってはいけないところで走りだした時、
『走っちゃダメでしょ!』とつい叱ってしまいがちです。
しかし、もしかしたら子どもはその先にあるものに興味をもち、
早く見てみたかったのかもしれません。
その好奇心を否定しないように触ったらだめな理由を説明することが大切です。
『ダメ!違う!』
という否定的な言葉を
『わかるよ、早く行きたいよね、でも他の人にぶつかると危ないから一緒に歩いていこうね』
と変えるだけで、子どもの新たな発見や好奇心を潰してしまうことなく子どもに伝えることができます」。さらに子どもの行動を考えるきっかけにもなるので親にとっても子どもの新たな一面を知ることができるそうです。
「また、ほめる際も声の掛け方を意識することが大切。
『すごいね!』『良い点取れたんだね』という褒め方は一見問題ないように思われますが、
テストの成績だけを褒めることで、点数にこだわったり悪い点のテストを隠そうとしたり、
結果重視の考え方になってしまうかも しれません。
ですので成果よりも努力や姿勢、
やり方を具体的にほめてあげるようにしましょう。
そうすることで興味の幅が広がり、
過程を楽しむことも覚えていきます」。
その際、どう思ったか子どもに質問をして会話を広げていくことで考える力を伸ばすこともできるのだそう。
このように意識や見方を変えると子どもとさらにうまくコミュニケーションが取れそうですね。
親子の信頼関係を育む
アクティブリスニングとは?
さらに親子にとって大切な時間として華先生はアクティブリスニングを推奨しているとのこと。
「アクティブリスニングとは自分の持つ100%の意識を子どもに向けて話を聞くことです。
自分の頭の中の考えを一旦白紙にして、子どもの言葉だけを丁寧に拾います。その言葉に対して、
相槌を打ったり丁寧な言い換えをしたりして話を聞くこと。これは子どもが自分に伝えたいことを自分自身が聞き手として本当に理解できているかを確認するための作業です」。
アクティブリスニングによって期待される効果は3つあるそうです。
1つ目は大人が勝手に意見を押し付けないので安心して心を開いてくれること。
2つ目は、否定されないので自己防衛や言い訳をする必要がなくなり、子ども自身が自分を冷静に見ることができるようになること。最後は、どんな感情も受け入れてくれる親への信頼の気持ちが芽生えることです。
「アクティブリスニングは集中力がいるので最初はとても疲れますが、
5分間でいいので時間を作ってみてください。
今後のコミュニケーションのカギとなるすてきな会話ができるはずですよ」。
親の幸せが子どもの心の糧になる
家族全員でかけがえのない日々を過ごすためには
最後に子育てに奮闘する方々に対して華先生は、
無理せず親自身の幸せを考えることも大切だということをお話ししてくれました。
「コロナ禍で思うように動けないこともあり、
世の中の親御さんは今自分のキャパを超えたものを要求されていると思うんです。
そんな中ストレスが溜まるのは仕方がないこと。
子どもの幸せを考えると自分の心に耳を傾けるのが後回しになってしまいがちですが、
自分がどうしたら幸せかということを考えるのも大切だと思うんです。
無理をせず、どうしたら満たされるのか、家族みんなで考えていけばいいと思いますよ。
たまにはパートナーとお互いアクティブリスニングをしあって気持ちを整理するのもおすすめです」。
華先生の著書の中には今回ご紹介した以外にも具体的な例を交えた子どもとのコミュニケーションのヒントがたくさん書かれています。
子どもの心を育み、家族の関係を良好にする教育術、
参考にしてみてはいかがですか?
【プロフィール】
島村 華子(しまむら はなこ)
モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者。上智大学卒業後、カナダのバンクーに渡りモンテッソーリ国際協会(AMI)の教員資格免許を取得。カナダのモンテッソーリ幼稚園での教員生活を経てオックスフォード大学にて修士号(児童発達学)、博士号(教育学)取得。現在はカナダの大学で幼児教育の教員養成に関わる。専門分野は動機理論、実行機能、社会性と情動の学習、幼児教育の質評価、モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育法。
【書籍情報】
タイトル:『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』
発売日:2020年4月17日
刊行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
本体価格:1,500円(税抜)